蝶夢
NL至上主義者による非公式二次創作小説サイト。
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そして少年は恋をする
他ジャンルのカテゴリーがCP表記の中、なぜ俺Tだけそうじゃないのかというと
俺Tはどれもおいしくいただけるからです(キリッ
真冬←東高です。原作補充。
これも書いたの古い。一番はじめに書いた俺T
俺Tはどれもおいしくいただけるからです(キリッ
真冬←東高です。原作補充。
これも書いたの古い。一番はじめに書いた俺T
今日は、とても悲しいことがあった。俺たちの憧れの人が行ってしまった――。と、ここまで書いて、山下匠は日課である日記帳(主に真冬さんと愉快な仲間たちについて)に書き込む手を止めた。
見送りにも行けなかった。あまりにもあっさりと、急に離れていってしまった。真冬の実家に話を聞きに行ったら、真冬の母親が出てきてどやしながらも事の顛末を話してくれた。山下もショックだったが、今や東高のトップツーとなった二人の落ち込みぶりと来たら並大抵のものではなかった。寒川は傍目にも明らかに落ち込んだ。大久保辺りが一生懸命慰めていたが効果は今一つで、今日の東高陣営ときたらお通夜のようだった。
もう一人、ナンバー3の座につく舞苑も不機嫌極まりなかった。山下を捕まえて「ちょっと殴って」と言うので仕方なく殴ってやったところ、「お前それ本気でやってんの? 全然だめだなまるで感じないんだけどもっと本気でやれよ」と何故か珍しいことに殴り返された。こんなドMの変態でも、一応はナンバー3を張っているだけあって非常に痛かった。舞苑はほぼ全員にそう言って詰めよった挙げ句、「…やっぱり、真冬さんの右手じゃなきゃ、だめだ…」と重々しく呟いた。山下は、気持ち悪いとやや引いたが、笑う気にはなれなかった。
少し立ち直った寒川が、「せめて反省しようぜ」と言うので、みんなで考えた。最終的な結論として、今まで真冬さんに沢山迷惑かけてたんだなぁ、としんみりした。
「なぁ、」
山下が口を開いた。
「真冬さんに、何か餞別贈らない?」
「いいっスね」
真っ先に反応したのは寒川だった。「何贈ります?」
「カッコいい人だったから、カッコいいものがいいな」大久保が、べちゃっとカラスに糞を落とされながら言った。
ああでもないこうでもない、鞭がいい、SMグッズは却下それじゃ嫌がらせでしょう、へー何お前の方が真冬さんのことをわかってるとでも言うの等と揉めること数時間、掴み合い殴り合うこと数回、漸く龍の刺繍がカッコいい財布に決定した。山下は悟った。真冬なしで東高(特にトップ二人)をまとめるのは至難の業だ。
「一人いくらー?」
「若干予算オーバーしたな。どーする?」
なんと言っても人数が多く、一人あたりの額は数百円でも一万円以上集まったが、張り込んだため予定よりも高い買い物になってしまった。
「あ、じゃあ足りない分、俺が出しますよ」
寒川が名乗り出た。実質次の番長であるし、真冬への想いも人一倍強いと自分で思っている故の行動だった。山下たちもあっさりと厚意に与ることにした。従ってすんなりそれでいくと思われたが。
「じゃあ俺は千円出す」
舞苑が横から寒川よりも多い金額を提示した。寒川はムッとした。
「なら俺は千五百円出します」
「二千円」
「二千百!」
「二千二百!」
いつの間にやらせりのようになっている。
結局みんなもう少し出しあって、あと一つ金のネックレスも贈ることにした。
「真冬さん喜んでくれるかなぁ」
山下が大事そうに真冬への餞別を抱えて誰に言うともなく呟いた。
「きっと喜んでくれるよ」
大久保はそう言うなり、バナナの皮を踏んづけて転んだ。
「ちゃんとアドレスとか聞いときゃよかったなぁ。そしたら挨拶ぐらいできたかもしれなかったのに…」
「そうだな、そういや聞いてなかった…てゆーかお前らのも知らねぇよ、俺」
「アドレス交換しとくか?」
そういう訳で全員アドレスを交換することになったが、真冬への手紙にもみんなの連絡先を書いておこう、と話が及んだ時寒川から待ったの声がかかった。
「真冬さんには、俺たちのアドレス教えるな。教えてもらうのもだめだ」
「何で?」
「だって、せっかく真冬さんは普通の女子高生になろうとしてんだぞ。それを邪魔するような真似は許さねぇ」
断固とした口調だった。山下はぼんやりと、やっぱり寒川が次のトップだ、と寒川を見つめた。それに、と寒川が続ける。
「…いつでも連絡できたら、俺たちは真冬さんに頼るだろ」
だからするな、と寒川は言う。舞苑からの意見もない。少し寂しいな、と山下は思った。
――寒川も舞苑も、それで平気なのかなぁ。
俺たちの憧れの人が行ってしまった、それはもうどうしようもない。
山下はシャーペンを握り直した。昼間の寒川の言葉を噛み締める。真冬がいなくなったのは悲しい。けれど冷静に考えてみれば、もしかしたらこうなった方が真冬にとって良かったのかもしれないとも思えた。
――だけど、これはさよならなんかじゃない。離れたって、いつまでも俺たちは仲間です。今まで番長、お疲れ様でした。真冬さん、ありがとう。
きっと寒川の言葉は、もっと俺たちが強くなろうという意味だったんだ。今度会う時まで、強くなっておくから。だから、真冬さん、今は待ってて下さい。
山下はぱたりと日記帳を閉じると、スタンドの電気を消した。
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