蝶夢
NL至上主義者による非公式二次創作小説サイト。
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眠り姫
イチルキ←恋です
眠ってるルキアさんと、それを見つめる野郎どものお話
眠ってるルキアさんと、それを見つめる野郎どものお話
窓枠に足を掛けたところで、ベッドに横たわるオレンジ頭を蹴飛ばしたい衝動に駆られたのは、至極当然の反応だと言える。
「テメッ…!」
と怒鳴りかけて、しかし問題のその隣、というか完全に抱き枕状態にされて共に眠っている件の幼馴染みがうぅんと小さく呻いたため、彼の勢いは削がれた。脚も腕も小さな体に絡め、柔らかな黒髪に頬擦りするように抱き締めて眠る姿はさながら恋人同士と言ったところだが、そんな筈はないし認めない。
「コラッ…一護! テメェ、起きろ!」
小声で怒鳴るだけの配慮が出来たのは、幸いにも二人が着衣していたからだ。これが何も纏っていない状態だったら、その場で卍解、ついでに後日千本桜が散ること必至だ。
「…なんだよ…うっせぇな…」
もぞもぞと頭だけ動かし、声の主がよく見知った死神であることを確認した一護は、「なんだ恋次か…」という呟きを落とすと、再び黒髪に顔を埋めて寝入ろうとする。
「寝るな! 起きろ! つか離れろ!」
「ッ、て!」
ぽかっと一発拳骨をくれてやる。そこで流石に目が覚めた。
「何しやがんだ!」
「バカ、大声出すんじゃねぇ!」
「あ?」
はた、と我に返り、自分の状態を自覚したらしい一護は「ぅああッ?!」とか何とか訳のわからない奇声を上げて赤面した。今更だろと恋次は思ったが、その様から何もないことがわかって安堵する。
ルキアは一人、まだすぅすぅと安らかな寝息を立てていた。
「なっ、えっ、あっ?」
「騒ぐな、起きちまうだろ。つーかさっさと離れろ」
完全に混乱している様子に、呆れた溜め息を吐く。いつの間にか大事な幼馴染みの隣にちゃっかり収まっているのが何となく面白くない、その反面彼女の恩人であることは十二分にわかっているため当然の関係だという思いもして、またそれが少しだけ面白くない。
「離れろ、ったって…」
手足を絡めていたのは一護の方だったが、解放してみるとその胸元辺りをぎゅっと握りしめ、しがみついていたのはルキアの方だった。一護はやや困ったように視線を外す。
「…なんでテメーらが一緒に寝てんだよ」
「あ? 別に…」
別にじゃねーだろ、普通『仲間』同士でこんながっちり抱き合って寝たりしねーんだよ、というツッコミは恋次の胸の内だけで終わった。変につっこんで藪蛇になったら敵わない。無自覚なら無自覚に越したことはないのだ。
「で、いつまでくっついてんだ」
「んなこと言っても離れねーんだよ、コイツが」
それは暗に惚気てやがるのか? と一瞬殺意が沸く。きつく握った手を開かせようとすると、ルキアは駄々をこねるように頭をふって一護の胸板に擦りよった。その仕草に男二人は固まり、一護は顔に、恋次は頭に血が上るのを感じた。間を置かず、すぅすぅ、と再び寝息が聞こえて、二人揃って脱力する。
「…よく寝るよな」
「…疲れてたんだろ」
仕方ないと苦笑して、さら、と無骨な恋次の指先が黒髪をなぜる。ふわ、とルキアが口元に微かな笑みを浮かべた。伏せられた睫毛が起きている時よりもその長さを明確にしている。肌の白さと相まって、殊更に赤く色づいた無防備な唇が艶めいて見える。
つーか、かわいい。一護と恋次が同時に浮かべた台詞は単純だったが、それ故に分かりやすい本音だった。
「…昔は、よくこんな風に寝てたっけなぁ…」
吐息にも似た呟きを溢す。髪を梳く手つきは、酷く優しい。
「安心、したんだな」
それが微笑ましくもあり、寂しくもある。それから、少し、悔しい気もした。一護のようにはなれない。一護が恋次のようにはなれないのと同様に。ただ側にいて、この笑顔を守れたらと、そう思っている。
するりと指先からルキアの一部がすり抜ける。惜しい気はしない、最早記憶している感触だ。それに今となってはいつでも、他愛なく触れることが出来た。それで十分だった。
立ち上がって、窓の桟に足を掛ける。一護が帰んのか? という視線を寄越した。
「先に帰るわ。起きたら、こっちのことは心配すんなっつっといてくれ。また連絡する」
「あぁ」
「あと、それから、」
変なマネしたら殺す。
ぼそりと付け加えられた牽制は、再び一護を赤面させる威力を持っていた。そのまま窓枠を蹴って、空へと飛び立ち、すぐに姿が見えなくなった。
「…誰がするか」
あー、と意味のない音を溢し、舌打ちした。どうしろってんだよ、一護は手のやり場に困り仕方なく頭を掻きながら、誰に言うともなくそうごちた。
「テメッ…!」
と怒鳴りかけて、しかし問題のその隣、というか完全に抱き枕状態にされて共に眠っている件の幼馴染みがうぅんと小さく呻いたため、彼の勢いは削がれた。脚も腕も小さな体に絡め、柔らかな黒髪に頬擦りするように抱き締めて眠る姿はさながら恋人同士と言ったところだが、そんな筈はないし認めない。
「コラッ…一護! テメェ、起きろ!」
小声で怒鳴るだけの配慮が出来たのは、幸いにも二人が着衣していたからだ。これが何も纏っていない状態だったら、その場で卍解、ついでに後日千本桜が散ること必至だ。
「…なんだよ…うっせぇな…」
もぞもぞと頭だけ動かし、声の主がよく見知った死神であることを確認した一護は、「なんだ恋次か…」という呟きを落とすと、再び黒髪に顔を埋めて寝入ろうとする。
「寝るな! 起きろ! つか離れろ!」
「ッ、て!」
ぽかっと一発拳骨をくれてやる。そこで流石に目が覚めた。
「何しやがんだ!」
「バカ、大声出すんじゃねぇ!」
「あ?」
はた、と我に返り、自分の状態を自覚したらしい一護は「ぅああッ?!」とか何とか訳のわからない奇声を上げて赤面した。今更だろと恋次は思ったが、その様から何もないことがわかって安堵する。
ルキアは一人、まだすぅすぅと安らかな寝息を立てていた。
「なっ、えっ、あっ?」
「騒ぐな、起きちまうだろ。つーかさっさと離れろ」
完全に混乱している様子に、呆れた溜め息を吐く。いつの間にか大事な幼馴染みの隣にちゃっかり収まっているのが何となく面白くない、その反面彼女の恩人であることは十二分にわかっているため当然の関係だという思いもして、またそれが少しだけ面白くない。
「離れろ、ったって…」
手足を絡めていたのは一護の方だったが、解放してみるとその胸元辺りをぎゅっと握りしめ、しがみついていたのはルキアの方だった。一護はやや困ったように視線を外す。
「…なんでテメーらが一緒に寝てんだよ」
「あ? 別に…」
別にじゃねーだろ、普通『仲間』同士でこんながっちり抱き合って寝たりしねーんだよ、というツッコミは恋次の胸の内だけで終わった。変につっこんで藪蛇になったら敵わない。無自覚なら無自覚に越したことはないのだ。
「で、いつまでくっついてんだ」
「んなこと言っても離れねーんだよ、コイツが」
それは暗に惚気てやがるのか? と一瞬殺意が沸く。きつく握った手を開かせようとすると、ルキアは駄々をこねるように頭をふって一護の胸板に擦りよった。その仕草に男二人は固まり、一護は顔に、恋次は頭に血が上るのを感じた。間を置かず、すぅすぅ、と再び寝息が聞こえて、二人揃って脱力する。
「…よく寝るよな」
「…疲れてたんだろ」
仕方ないと苦笑して、さら、と無骨な恋次の指先が黒髪をなぜる。ふわ、とルキアが口元に微かな笑みを浮かべた。伏せられた睫毛が起きている時よりもその長さを明確にしている。肌の白さと相まって、殊更に赤く色づいた無防備な唇が艶めいて見える。
つーか、かわいい。一護と恋次が同時に浮かべた台詞は単純だったが、それ故に分かりやすい本音だった。
「…昔は、よくこんな風に寝てたっけなぁ…」
吐息にも似た呟きを溢す。髪を梳く手つきは、酷く優しい。
「安心、したんだな」
それが微笑ましくもあり、寂しくもある。それから、少し、悔しい気もした。一護のようにはなれない。一護が恋次のようにはなれないのと同様に。ただ側にいて、この笑顔を守れたらと、そう思っている。
するりと指先からルキアの一部がすり抜ける。惜しい気はしない、最早記憶している感触だ。それに今となってはいつでも、他愛なく触れることが出来た。それで十分だった。
立ち上がって、窓の桟に足を掛ける。一護が帰んのか? という視線を寄越した。
「先に帰るわ。起きたら、こっちのことは心配すんなっつっといてくれ。また連絡する」
「あぁ」
「あと、それから、」
変なマネしたら殺す。
ぼそりと付け加えられた牽制は、再び一護を赤面させる威力を持っていた。そのまま窓枠を蹴って、空へと飛び立ち、すぐに姿が見えなくなった。
「…誰がするか」
あー、と意味のない音を溢し、舌打ちした。どうしろってんだよ、一護は手のやり場に困り仕方なく頭を掻きながら、誰に言うともなくそうごちた。
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